人の思惑や、世間の口の端で
ルイーズ 人の思惑や、世間の口の端で、心がはりをするやうな女なら、棄ててしまつても惜しくはないぢやありませんか。(間)実を云へば、あたしも、はじめの二三日は、人からじろじろ顔を見られるのが、何だか気恥かしいやうな心持がしましたけれど、あたしがあなたのものであり、あなたがあたしのものだと云ふ気持ちが、だんだんはつきりして来るにつれて、今迄は、自分を世間のうちに置いて、いくらか人ごとのやうにあたし達の関係を見てゐたのが、こんどは、自分を全く二人きりの世界に置いて、そこから、平気で世間が眺められるやうになつつたの。だから、人がどんな眼で見やうと、こつちからさう云ふ人達の眼を嗤つてやるだけの余裕が出来てゐるわ。(間)あなたはあんまり考へ過ぎるのよ。あたし達が不釣合だとすれば、あたしの方に寧ろ足らない処があるんだわ。
留雄 常談をおつしやい。あなたに欠点があれば、それは美し過ぎると云ふ欠点でせう。
ルイーズ そんなことはまあ別として、第一日本の女でないことが欠点よ。
留雄 僕が仏蘭西人でないと云ふことはどうなるんです。
ルイーズ それがあたしの望みなんだからいいぢやないの。
留雄 僕もあなたが日本の女でないことを幸ひに思つてゐるんです。
ルイーズ そんなら、それでいいぢやありませんか。
留雄 あなたは、僕を日本人だから愛するんぢやないと云ひましたね。
ルイーズ それは、あなたが、日本人だから愛すると云ふ愛し方ならいやだとおつしやつたからだわ。
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