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セエラは聞えるか聞えないほどに

セエラは聞えるか聞えないほどに、口笛を吹きました。何か呪文を称えるように、四五たび吹きました。すると、それを聞きつけて、灰色の頬鬚を生やした鼠が、眼をきらきらさせて、穴から顔を出しました。セエラがパン屑をやると、メルチセデクは静かに出て来て、それを食べました。彼は少し大きな屑を持って、小忙しげに帰って行きました。
「ね、あれは、おかみさんや子供達に持ってってやるのよ。えらいでしょう。自分は小さいのだけ食べるのよ。帰って行くと、家のもの達が悦んで、ちゅうちゅう大騒ぎよ。ちゅうちゅうにも三通りあるのよ、子供のちゅうちゅうと、メルチセデク夫人のちゅうちゅうと、それからメルチセデク君のちゅうちゅうと。」
 アアミンガアドは笑い出しました。
「セエラさんは変ってるわね。でも、いい方ね。」
「私変っていてよ。私はまたいい人になりたいと思ってるのよ。」セエラは小さな手で顔をこすりました。そして、やさしい少し悩ましい顔になりました。「パパもよく私を笑ったものだわ。でも、私笑われてうれしかったわ。私は変人だけど、私のいう出まかせは面白いと、パパは仰しゃってたわ。私、お話を作らずにいられないのよ。お話を作らずには生きていられないのよ。」セエラはちょっと口を噤んで、部屋の中を見廻しました。「少くとも、こんなところに住んでいられるはずはないわ。」
 アアミンガアドは、だんだん惹き入れられて来ました。 http://www.cabalink.net/

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