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そこで話を遠い遠い昔の

そこで話を遠い遠い昔の、今より推算すれば約五十万年前の古にかえす。そのころジャバに猿に似た一人の人間――私はかりに人間と名づけておく――が住んでいた。無論一人で住んでいたわけではなく、仲間もたくさんいたことであろうが、ただ一人だけのことしか今日ではわからぬ。もっともその一人の人について言っても、その人がはたしてどんな暮らしをしたか、どんな事を考えていたか、女房がいたか、子供がいたか、そんな事は少しもわかっていないが、ただそういう一人の人がいたということだけは確かにわかっている。それは今から二十余年前、一八九一年にオランダの軍医デュブアという人が中央ジャバのベンガワン川に沿うて化石の採集をしていたころ、トリニルという所の付近で、たくさんの哺乳動物の遺骨の中から一本の奥歯を発見したのであるが、それがすなわち先に言うところの五十万年前の人間が遺して死んだ臼歯の一片である。そこでデュブア氏はなおていねいに土を掘ってゆくと、先に奥歯の発見された所から約三尺ばかり隔てた場所で頭蓋骨の頂を発見した。それからさらに引き続き発掘をしていたところが、今度は頭蓋骨の発見された所から八間あまり隔てた場所で、左の大腿骨と臼歯をもう一本だけ発見したのである。
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