トップページ > サービス/メニュー > カテゴリーなし > 青森へは七時に着いた

青森へは七時に着いた

青森へは七時に着いた。やはりいい天気であった。汽船との連絡の待合室で顔を洗い、そこの畳を敷いた部屋にはいって朝の弁当をたべた。乗替えの奥羽線の出るのは九時だった。
「それではいよいよ第一公式で繰りだしますか?」
「まあ袴だけにしておこうよ。あまり改った風なぞして鉄道員に発見されて罰金でも取られたら、それこそたいへんだからね」
 私たちはまだこんな冗談など言い合ったりしていたが、やがて時間が来て青森を発車すると同時に、私たちの気持もだんだん引緊ってきた。一昨日は落合の火葬場の帰り、戸山ヶ原で私は打倒れそうになったが、今朝は気分もはっきりしていた。三つ目のN駅は妻の村であった。窓から顔を出してみると、プラットホームの乗客の間に背丈の高い妻の父の羽織袴の姿が見え、紋付着た妻も、袴をつけた私の二人の娘たちも見えた。四人は前の方の車に乗った。妻の祖母と総領の嫁さんとは私たちの窓の外へ来て悔《くや》みを言った。次ぎのK駅では五里ばかし支線を乗ってくる伯母をプラットホームに捜したが、見えなかった。次ぎが弘前《ひろさき》であった。
http://www.deliask.net/shinjuku/
http://b5.spline.tv/adabana/

ページトップへ戻る
Copyright(C) 朝焼けは雨、夕焼けは晴れ All Rights Reserved.